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タイトル : 狂える医師のカルテ

1 mad_doc

2002/02/13 21:35

狂える医師のカルテ

 1月から狂える医師は(狂ったまま・・これは治らない・・・)医療現場に戻りました。その模様をお伝えしようと思います。
 しかし、わが道徳律に基づいた「医師の守秘義務」というものがありますので、それに触れない仮名・仮称にさせて頂くのは勿論。この同じ丸い地球の上、同じ空気を吸っている人々の話とは思わず、あくまで「創作」と思い読んでいただければ、私の良心も許してくれるでしょう。
 そこまで良心や道徳律にこだわりながら何故書くかというと、個人的に是非皆様に知って頂きたい未知の世界に足を踏み入れたような気分になったからです。「個人的に」なのでつぶやきめいたものを聞きたい人のみ読んで下さい。
前置きはここまでで・・


症例その1 わたし

 内側からエネルギーが湧いてきたのを感じた。5月の風に夏の匂いを微妙に感じるような感覚。
「今だ。」
 長くかかった。1年半以上かかった。焦った時期もあったが時は満ちた。
目前のPCの検索画面にある「ドクター・バンク」数件に自分の履歴を記入した。
翌日には求人情報のメールがぽつぽつ。
医局や教授のコネでなく初めて自分で探す仕事先。どうしてもやってみたい仕事があった。

老人医療。

 大学病院時代にバイトで行っていた老人病院は「化石の森」そのもの。
息をしているのかどうかも分からない患者達が白いリネンに埋もれていた。
「この人達には生きている意味があるのか?」
「こんな所で医療費無駄遣いするんじゃねぇよ。」と思っていたわたし。
 自分の白血病患者を入院させるために安定した病状の老人患者を無理矢理老人病院に転院させてきた。

「姥捨て山」と誰しも思いしばしばジョークでそう言われる場所。そこで働いてみたかった。
本当に「姥捨て山」なのか体験したかった。

 その翌日にはお誂え向きの病院が登録されていた。
某国首都圏辺縁部の更に山深く入った場所の特例許可老人病院。
わたしはその日にその病院に電話し翌日面接の約束をこぎつけた。
わたしは外弁慶である。面接はお手の物。ましてや老人病院でわざわざ働きたい医者なんかいないものだから相手はわたしの持っている医師免許しか見ていない。

 即、採用。

教員免許を4枚持ちながら職を探すのに1ヶ月半、四苦八苦していた愚弟は羨望の余り罵倒した。
そしてわたしの人生に新しいカルテが加わることになる。

症例その2に続く

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2 wolf

2002/02/13 22:08

やっほー!
どくたの新連載も始まった!
頑張って下さいね。

・・・て、ここレス付けても良いのかな?

> 四苦八苦していた愚弟(哀)
結果オーライでっせ。
弟君は、おそらくこれ以上無い、ピッタリの職場に居るのだからして。。。(笑)
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3 ともちゃんだ!

2002/02/13 23:29

氷犬さまに続いて、どくたの連載も!これは、「始まり」というよりは、「新装開店」ですよね?
舞台や考えは、多少変化あったとしても、今は無きgooの掲示板時代から、最も人気があり、支持も多かった2人が再び、自分の考えや経験などを親しみやすく描く・・・とても素敵です!肩に力入れすぎない程度に続けてくださいな。。。

ちなみに、どくたはとものこと、覚えてるかしら・・・うぅ・・・
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4 mad_doc

2002/02/14 00:15

>おおかみさま、
>・・・て、ここレス付けても良いのかな?

勿論ですとも。「なんでも有り有り」は兄貴譲りです。

>ともちゃんだ!さま
>どくたはとものこと、覚えてるかしら・・・うぅ・・・

このインパクトのある名前を忘れる訳がないじゃありませんかっ!!
新装開店早々お越しやすぅ(はぁと)
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5 氷犬

2002/02/14 12:12

なんやなんや、なんや〜〜〜!!!
センセ復活しとるやないか!!

おっっめでっっとさ〜〜〜ん!!!

今回は負け犬の遠吠えとは独立したスレになって、ちょっとさみしい気もするけど、何にせよめでたいこっちゃ!

これからも、おもろい話、ぐっと来る話、色々聞かせてや。期待してるで。

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6 mad_doc

2002/02/14 12:40

>兄貴
いや、いつまでも軒下を借りているのは申し訳ないし、兄貴の落書きの連続性を壊すのも申し訳ないと思い、勝手にのれん分けさせて貰いました。題名は兄貴のパクリです。
落とし前つけちゃイヤンイヤン。
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7 氷犬

2002/02/14 12:48

>落とし前つけちゃイヤンイヤン。

う〜ん、抜ける言うなら、指の一本や二本は置いてってもらわんと。
この世界、厳しいんやで。(どの世界や(笑))
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8 フランソワーズ

2002/02/14 15:28

お帰りなさいませ。 m(_ _)m

名前は変えたけど、性格は変わらず・・・・
(((((≪ぢゅどーん!!!≫)))))(/_x)/アレー

 by フランソワーズ・テレシャン 
(時たま、昔の名前で出ています。 : telle)
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9 youko

2002/02/14 19:20

どくたー その管轄は私が今、もっとも関心をもっているとこです。老い先短いわたしめのためにその分野とくと極めてください。
できれば急ぎおたのもうします。


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10 みつき@女王様

2002/02/14 20:08

逆に子供病院にいるので、老人医療関係はまったく分かりません(笑)

小児慢性とか特定疾患だとか育成や養育なら分かるんだけど…。

老人医療の病院はころころと診療点数が変わるので大変そうです。小泉さん、ちゃんとしてくださいよっ(怒)
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11 いろは

2002/02/15 10:16

ここにも、どくたーが復活!
嬉しいですねぇ。
老人医療・・・人は皆、いつかは行きつく処だものねぇ。
人事じゃないんだけど、よくは知らないものねぇ。
どんなお話がきけるのか、楽しみにしてます。
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12 mad_doc

2002/02/15 15:29

>兄貴
>う〜ん、抜ける言うなら、指の一本や二本は置いてってもらわんと。

だから、指はだめだってばぁあ。
分かった!今日お風呂に入るときに頭までズボンと浸かることにします。これで”風呂に沈めた”事にしてください。それか、内股にマジックで薔薇のもんもん書くっちゅうのはどぉ?

>フランソワーズさま、
>お帰りなさいませ。 m(_ _)m

こちらこそ、今頃ごそごそ出てきてすみません。m(_ _)m
>名前は変えたけど、性格は変わらず・・・・はお互い様です(しょぼーーん)

>youkoさま、

なにいっとりますねん。youkoさまのお若さなら、まだまだ・・・いや親御さんの心配ですね。
まったりいきますので、ゆうるりとご覧下さい。

>女王様、
>小泉さん、ちゃんとしてくださいよっ(怒)

そうです、その内、その言葉がでてくる予定です。
ご無沙汰しており本当に申し訳ありませんでした。

>いろは様、
>老人医療・・・人は皆、いつかは行きつく処だものねぇ。

激しく同意です。なので、インサイド・ウォッチを敢行した次第です。

・・・んでは本題。
症例その2 病院

 採用が決まると、院長先生は私にとても立派なパンフレットをくれました。患者さん用の病院紹介のパンフレットです。それにしても、結婚式の案内状のようなゴージャスな作りです。

”小鳥がさえずり、時には野生の小動物も顔をのぞかせる森の中で・・・・澄みきった大気、あふれるばかりの緑が良く調和し素晴らしい自然環境をつくりあげております・・・・云々”
(う〜〜〜ん、ど田舎の山奥というのをこのように美しく表現するのか)としばし感慨深く眺めていました。
 と、同時になんだか、荒野を優良物件と謳うアヤしい不動産屋さんを目の前にしているような気分にもなりました。(ふ〜〜ん、この立派なパンフレットで患者さんや家族を釣ってぶちこむ訳ね。)すっかり院長先生は私のなかで悪徳金稼ぎ医者に変貌し、その屈託ない笑顔がムネヲ議員のそれとダブって見えるようになりました。

と、目にとまったのは病床数。
 500床。
そういえば、病院全体は山の斜面に立っていましたが、3棟に別れています。病棟は8棟。500床といえば、私の母校の付属病院が600床でしたから、かなり大規模な病院です。正直(・・・・500人の化石・・・うぐぅぅ・・・トンデモない所に来てしまった。ぎょえ。)が感想でした。

 そんな事を考えている由も知らず、医局長先生がやって来て「じゃあ、病棟を一通り案内しましょう。」と仰りました。(ぐ、500人の化石、500人の化石)と頭がぐるぐるするまま、医局長の後に付いて行きました。病院内はどの病棟も広く清潔に保たれていました。
 院長先生(私の中では悪徳金稼ぎ医者)の趣味か、やはりゴージャスな絵が壁のそこらに掛けられていました。それに混じって心和む千代紙の貼り絵やそこここに置かれた形のちょっとおかしいぬいぐるみやお人形。明らかにミスマッチです。
ゴージャスな絵が悪徳金稼ぎ医者で形のちょっとおかしいぬいぐるみが患者さん。
その混在がこの病院なんだ、患者さんの存在を表面に掲げているのには安心しました。院長先生を悪徳金稼ぎ医者から、金稼ぎ医者に格上げしときました。

絵とぬいぐるみの間。
そこを自分の居場所としようと思いました。

症例その3に続く
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13 みつき@女王様

2002/02/15 22:29

500床、600床…。多いね…(汗)

うちは250床でよかった…(それでもその内の入院患者170人分のカルテを私一人で対応するのにムリがあるぞ…)
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14 mad_doc

2002/02/19 20:03

>女王様、

個人病院恐るべし・・・ですぞ。とにかく、私の感想はパワーの違い。
しか〜〜し、レセプト170人分は・・・・まさに地獄ですな。

ということで

症例その3 医師達

>ましてや老人病院でわざわざ働きたい医者なんかいない

 と思っていた私は、又しても裏切られました。病床500床と言うこともあり、ここには約20人の医師が勤務しており、立派な医局を形成していました。

 ただし、もっと、驚かされたのはその面々です。(え、患者さんじゃないの?)と疑わせる老医師団です。なんと、最高齢者は91歳!!うーーー、齢30余りでヘタって鬱だとか病気だとかほざいていた自分が恥ずかしくなるような立派なご老体です。殆どが、65歳以上であり、昼ご飯の後は「お薬タイム」と「病気自慢タイム」の始まりです。みな、机の中をゴソゴソしてクスリを取り出し、飲み始めます。
「いやぁぁ、今朝は血圧が160もあって。」
「俺なんか血糖が160だったぞ(一同老いた笑い)。」
 患者さんの事でなく、自分達の病気自慢です。これでは外来待合室状態です。

(女性の患者さんは女医さんだと安心するもんなぁ、お年寄りはじい様センセのほうが安心するんかなぁあ)初日、患者さんもまだ受け持たず、一種異様なこの医局の雰囲気に身を置きながら、ぼんやりこの病院に勤めて私は患者さんの役に立つだろーかと少し、心配になりました。と、同時にこんなじい様でも勤まるんなら、あたしの若さじゃ楽勝ねっ!とも思いました。

 ただし、じい様センセの話をお聞きしている内にタダのじい様センセ達ではないことに気づきました。
殆どがT大やKO大などの高級大学の教授様であらせられて定年後”老後の趣味とボケ防止”のため、勤務して在らせられたのです。ウキュウーです。そんなセンセ、ヒエラルキーの強い我らが商売では、学会なんか行っても私なんぞ洟もかけられない大御仁達です。三流大学卒、認定医さえ取得していない私がそんなセンセ方と肩を並べて仕事するとは畏れ多いわぁ、なして私を雇ったのだろーか、院長先生は金儲け+人事感覚問題有り医者へと私の中で変化しました。

 そしてじい様センセの学歴肩書きだけでなく実力も目にする機会に巡り会いました。
一般病院から肺炎のため、気管内挿管されていた患者さんが入院してきたのですが、チューブは口から挿入されていました。肺炎の状態は低めで安定しているため、チューブは長期間必要になりそうです。
 「口から入れてたら不潔になるだろ。」と齢70歳のセンセ(机が隣でよく戦争関係の本を読んでいるため私はからかって”ウヨク”というあだ名をつけました。その後、私が「非戦」という本を読んでいるのを見て”サヨク”と名付けられました。この病院では私は”サヨちゃん”です)が言い出し、気管切開することになりました。気管切開とは、喉仏の下の方に穴を開けて、その穴からチューブを気管に入れる方法です。口の中の雑菌などがチューブにつかず、清潔に操作できます。頸部は一般的に血管が多いため、出血が多く止血しながら行うので時間がかかるのですが、”ウヨク”センセは10分もかからず終了しました。
じい様パワー侮るべからず!

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15 氷犬

2002/02/19 23:03

おもろい!!
手放しにおもろいわ!
そのスーパー爺様達と今後、どうセンセが絡んでいくか、期待と不安でワクワクするで、ほんま。

(ひと事やから、お気楽なんやろな、わし。
 本人にしたら、きっと期待と不安で・・・・あれ?わしと同じやない?)
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16 フランソワーズ

2002/02/19 23:32

喝采!
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17 みつき@女王様

2002/02/19 23:47

…気管切開に10分かからないとは。
恐るべし。老医師(笑)

気管切開してる患者さん見ると、気が遠くなる私(かわいい♪←オイ…)

最近、インフルエンザに「シンメトレル」(アマンタジン)を出すんですけど、これ、けっこう効きますね〜。お勧めとばかりにインフルエンザの患者がいるとこればっかりを出すうちの医師連中(笑)
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18 mad_doc

2002/02/20 17:15

あ〜、それにしても連日医療事故の報道・・・。世の中医療不信がますます広がっていくぅ。医療事故についてはいつも「明日は我が身」で身のすくむ思いです。
 ただし、こまめな病状説明と患者・家族さんとの信頼関係の2つは技術以前の人間同士の最低限のルール。これらさえ出来ない同業者がなんと多い事か(はぁ)・・・いやいや「明日は我が身」、これは自分自身へのつぶやきです。

>兄貴
>手放しにおもろいわ!
 多大なお褒めの言葉又しても身のすくむ思いです。
兄貴を見習っているだけでする。

>フランソワーズさま
 まで喝采いただき、いやもうデレデレです。誉められると張り切る相変わらずの性格で仕事そこそこに帰ってきました(おいっ!「明日は我が身」はどーしたよ!との突っ込み希望)。

>女王様、
>…気管切開に10分かからないとは。
>恐るべし。老医師(笑)

いや、今までで一番美しいオペをまさか老人病院で見れるとは思ってもいませんでした、私も。
「シンメトレル」私も、お世話になりましたよ〜〜。元々は痴呆症のクスリで、あるボケ老人の多い老人病院では何故かインフルエンザがあまり流行らなかった・・・という所から、ウイルスの増殖を抑える作用が発見されたんですね。
新しい抗ウイルス薬も続々出てきていますが(兄貴のスレッド参照)、小児には適応が通っていませんでしたもんね。


んでは本題

症例その4 加部さん

 まぁ、初日始終そうやってポーッと思惑しながら、用事もなく病棟をさまよい歩いていました(というか、道を覚えないと迷子になるような大きな病院でしたから)。出会う病棟の看護婦さんや助手さん達に挨拶して回り、顔を売って歩きました。そう、私達の稼業一番大事なのはいかに看護婦さんや助手さんと仲良くなるかにかかっているのです。

 翌日、(後日”ウヨクセンセ”と名付けることになる)隣のじい様センセが「ヒマそうだな、センセ、ヒマでしょ?」と話しかけてこられました。「ヒマしてます!ヒマしてます!」と叫ぶと「よっしゃ、じゃ、患者分けてあげるわ。」と嬉しいお言葉。イエーイ!!患者さん、患者さん!
 3人頂きました。2人は、寝たきりで話しかけても答えのこないおばぁちゃん達。そして加部さん(仮称)。一応、車椅子に乗っており、意識ははっきりしていますが、右側の半身が完全に麻痺しており、口が不自由で涎をダーダー流しています。

「加部さ〜〜ん、初めましてっ!!ウヨク先生から加部さんを与りましたサヨクと申しますぅぅ!」
 年寄り相手で耳が遠いのではないかという事と、初めての患者さんと言うことで私の声は叫び声になっています。
「アーアー(涎ダー)。」
「体の調子はどーですかぁぁあ!?」
「アーアー(涎ダー)。」
「どこか痛いところはないですかぁぁああ!?」
「アーアー(涎ダー)。」
「困った事はないですかぁぁああ!?」
「アーアー(涎ダー)。」
 うう、分からない、この人ボケてるんかぁ?

「あんた、うるさいよっ!こっちは寝てるんだよっ!」
 同室の患者さんから、しまいには苦情が飛んできました。お向かいのベットの患者さんも苦笑しています。あちゃー、シマッタ。
「済みません、済みません。」
 と寝ていた患者さんに謝りながら、声を1オクターブ落として50dB位小さくして、
「加部さん、聞こえますかぁ?」
 と聞きます。
再び「アーアー(涎ダー)。」と、言いながら加部さんの左手が動きます。震える左手に鉛筆を握り、クリップに留められた分厚いメモ帳に「耳は聞こえます。体の調子はいいです。」と、書きました。
 ボケてない。ボケてたのはこっちの方でした。しかし、その時、私はその分厚いメモ帳の意味にはまだ、気づいていませんでした。


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19 mad_doc

2002/02/20 17:18

 加部さんの一日は朝ご飯を食べて、10時位から車椅子で1階の面談コーナー(1階には5箇所くらいの広い面談コーナーがあります)に行きテレビを見ながら、カップコーヒーを飲む事から始まります。どうもこれが毎日の日課のようです。但し、コーヒーは半分ぐらい涎と一緒にダーと口の外に流れていきます。その日も医局からちょっと出た所の面談コーナーでテレビを見ていました。
「加部さん、この前はごめんね、部屋の人と喧嘩にならんかった?」
「アーアー(涎ダー)。」と、言いながら、いやいやというように左手を振ります。
 と、そこにケースワーカーさん(患者さんの社会面のお世話をしてくれる病院常駐の人)が通りかかりました。
「加部さん良かったねぇ、若い女の先生で。若返るねぇ。」
「アーアー(涎ダー)。」と、ニヤリとする加部さん。
「でも、あたしよりウヨク先生の方が安心するっちゃない?」
 その言葉に、ケースワーカーさんが「先生、出身はどこですか?」と聞きます。この後、これは一言喋る度に何百回もいろんな人に聞かれる言葉になります。私の訛りは「全国方言しゃべくり大会」で優勝出来るほど素晴らしいものなのです。
「ああ、九州なんですよ。」
「あらぁ、加部さんの奥さんも長崎よねぇ。私も福岡よぉ。」
「九州女は美人が多いもんね。」と、私。
「アーアー(涎ダー)。」と、加部さんもニヤニヤします。
「奥さんは良く見舞いに来てくれると?」
「いや、奥さんも体が悪くて、家で寝たきりなのよね。」
「アーアー(涎ダー)。」
「そりゃ、淋しいねぇ。調子が良くて家の人の都合がついたら、外泊してもいいよ、奥さんに会いたいやろ。」
「アーアー(涎ダー)。」
「そうですね、家族の人に連絡して聞いてみましょうかね。」と、ケースワーカーさん。
「アーアー(涎ダー)。」加部さんはニコニコして、いつもよりたくさんコーヒーをこぼしました。

 その2日後でした。
加部さんの部屋に行くと、左手に紙が握られていました。
「加部家葬儀案内」
奥さんが急に容態が悪くなって亡くなってしまったのです。
私は「なんで、なんで。」としか、言えませんでした。目に付いたのは分厚いメモ帳。

「梅の花 まだですか 妻逝きぬ」
「うぐいすの 声聞かずして 妻逝きぬ」
「車椅子 我間に合わず 妻逝きぬ」

加部さんはアマチュア俳人でした。新聞にも月に2回くらい掲載される腕の持ち主でした。
私は、加部さんの外泊許可を出しました。奥さんに会いに行くための。

何か出来ないか、と考えて思いあたりました。忙しい頃、年賀状だけ買って出さずじまいだったものがたくさんあります。郵便局に行って官製はがきに換えて貰ったら150枚くらいになりました。それを
「これ、香典替わりね。これで、たくさん俳句書いて応募して。」
 と私達の密会場所である面談コーナーで渡しました。
「アーアー(涎ダー)。」
 相変わらずコーヒーをこぼしながら、泣きながら加部さんは左手で合掌しました。

 加部さんは、大事な事を教えてくれました。涎を垂らしていても、口が利けなくても、中身には人生が詰まっている一人の成熟した人格が潜んでいるという事です。私は今までそんな患者さんはボケていて訳が解らないから子供のように扱っていました。掘り下げて潜んでいる人格を発見する時間的余裕がなかったというのが、私の言い訳です。入院患者3人だけというまったりしたおつき合いのお陰でようやくそれを発見する事が出来ました。それから、患者さんに接する時には注意深く、目の奥に潜む人格を探りながら話しかけるようになりました。寝たきりの他の2人のおばあちゃん達も、口が動かないだけで、こっちの言うことが全部分かっているとしたら、私の今までの接し方ではとんでもない侮辱だっただろうと反省しました。

「加部さんって凄い人なんですねぇ。」医局に帰ってウヨク先生にポツリと言いました。
 
「いや、ここにいる患者の半分以上は俺より頭がいい人ばかりだよ。」
 ウヨク先生はそっけなく言いました。分かってるじゃん、じい様ぁぁああ!!と叫びたくなりました。

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20 いろは

2002/02/21 13:11

うるうるうる〜。
いいお話じゃないですかー。
お年寄りは人生の先輩ですものね。
色んな「思い」を持ってらっしゃるんだろうなぁ。
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21 wolf

2002/02/21 20:47

ううぅ・・・・・、ええ話や〜〜〜。
おっと、、、いかん、いかん。
ちょっと、氷犬さん入ってしも・・・しまった。

どくたー、続き楽しみにしてます。
執筆頑張ってねー。

どくたのカキコ読んで、入院中のじーさんネタ一個思い出しました。
次回にでも書いて・・・良いのかな?ココ。
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22 mad_doc

2002/02/21 22:23

>いろはさま、

んだ、んだ。
>色んな「思い」
それをここにつづりたいですだと思ひスレッド立ち上げたとこです。

>狼さま、

ちゅうことで、是非、じーさんネタ次回お願いします。
わちきは医療リハビリ途中で気が向いた時にしかカキコ出来ない(しない?)ので。
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23 氷犬

2002/02/22 00:48

センセ、
相変わらず話の持っていき方の上手さと、感受性の豊かさの際立つ書き込みや。(作品て書こうと思うたけど、有る意味いやらしい響きあるから「書き込み」てした。)
そして、要点を簡潔にまとめてさらっと書くところは、ダラダラ長々としか書けんわしは、是非見習うべきやな。
で、最後の数行で話全体をきゅっと締める。
何度も言うけど、おもろい!!

wolfさん、
せやからいらん誤解招くんやて。(笑)

今度はwolfさんのじーさんネタやね。
期待しとるで。
(いまさら、「やめる」は、おとしまえもんやで〜〜。(笑))
削除キー   

24 mad_doc

2002/02/25 18:48

えへえへ、狼さま、ご多忙の模様、暇こいてるいい加減医者のつぶやきでも再開しましょうか。(ちゅーても待ってるよぉ、狼しゃん・はぁとぉ)

症例その5 助手さんその1

助手さん

 看護助手さんというのは医療行為に関わらないシーツ交換や食事の介助・トイレの介助など、患者さんに最も身近なお手伝いをしてくれる人達です。そのため、しばしば実は主治医や看護婦さんよりも患者さんの事を一番把握している人物だったりします。

 「医療はチームワークであって医師はそのチームの役割分担の一つ」は私の持論です。看護婦さんも医療事務の人も勿論看護助手さんも上下関係ではなく「患者さんを治療する」チームの各役割の不可欠なメンバーだと思っています。実際問題賃金などで階級が作られているのが現実ですが・・・。

 私は、結構なヘビースモーカーです。でも、喫煙所で吸っていると、じい様センセ達がやって来て「サヨチャン、女のくせになんだい、スパスパやって。」とか、いじめます(というか可愛がられる)。(じじい、あんたのほーがタバコくせーよぉぉ!!)と思いながら「えへえへ」と言いつつ吸っています。
 しかし「俺は糖尿病で8ヶ月前にきっぱり止めただぁ!」というじい様センセが「やっぱ、子供作る女が吸っているのはよくないよぉ。」と、言いまくるので、隠れ喫煙所を探す必要がありました。大体、どこの病院にでもあるものです、看護婦さん達がひっそり喫煙する隠れ喫煙所が。
見つけました。古い病棟(3階建て)の屋上(閉鎖されている)への階段の踊り場です。

 「ヤッホー」と思い、そこで初喫煙。と、そこに掃除の助手さんがやって来ました。「センセ、換気扇付けてよぉ。」と、助手さんはギロリと睨みながら階段を掃除していきます。「あたしゃ、タバコ吸わないんだから。」よくみると、換気扇のスイッチが確かにありました。ありゃ、またしても失敗。
「すみませんでした。次から気をつけます。」と謝り、その場は取りあえず逃げました。
 翌日、しっかり換気扇をつけてタバコを吸っていると、おばちゃんがまた一段一段丁寧に階段にモップをかけながら上がって来ました。
「今日はちゃんと、付けてますよ〜〜!」と声をかけると、おばちゃんはニッコリと笑いました。
「私もね、10年前までは一日2箱は吸ってたんだよ。」
 おばちゃんは、手を止めるでもなく語り始めました。
「でもね、ある日きっぱり止めたね。」
「なんでですか?」
「婦長さんがね、嫌な人だったのさ、タバコ嫌いでね、嫌味ばっか言われてね。」
 モップをかけながら喋ります。
「3人吸ってる助手がいたけど、あたし以外の2人は辞めさせられたね。あたしゃ、辞めなかった。
 でもね、ある日すごい喧嘩になって、冬の寒い日、窓を全部開けられたのさ。
 それで、こっちもカチンときてそれ以来。いや、今思うとありがたいね。
 あの婦長さんのお陰でタバコ止められて。」
「・・・・大変だったんですね。」
 初めておばちゃんはモップの手を止めてポケットをゴソゴソします。
「これだけは、お守りに持ってるよ。ほれ。」
 ジッポのライター。「もう使わないけどね、ポケットに入れてると安心するわ。」
「おばちゃん、いくつ?」
「68だよ、まぁ、70までは働きたいね。」
「80までは大丈夫でしょ。」
「あはははは。」

助手さんその2に続く

兄貴に見習ってちょいと引っ張ってみます。
削除キー   

25 氷犬

2002/02/26 11:22

これでセンセにじらしのテク覚えられたら、負け犬が更に見劣りするがな!(笑)
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26 wolf

2002/02/26 22:56

しもーた!
こっち開くの忘れてたー。。。(汗)
やばっ、、、「おとしまえ」言われとるがな。

じーさん話、近々書かせて頂きます。>どくた。

でも、今日は満月!
大人しく机に座ってられまへん。

なのでこれから、夜の梅園で撮影だい。
月に三日だけ、やたら元気な私。

それでは行ってきまっす!
削除キー   

27 mad_doc

2002/02/27 09:26

>兄貴

いやいや(ニヤ)、兄貴のじらしテクは実践に基づいていると思われるので、習得するのは困難ですだ(エロ医者)。

>狼さま

いいよーー。
ル・ガルになっておいで〜〜。

とほほ、何故か、2日働くと疲労感で押しつぶされそうになり、今日はサボってしまいました。
どーも、まだ頑張り過ぎているようです。まったりしているつもりなのですが、体(心?)は正直です。「やりたいことしかやらない」事にしているので今日は読書とネットで過ごします。まぁ、こーやって少しずついー加減医者になっていくのですな。
「疲れてても頑張る」にはもう少し時間が必要な模様。
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28 かなめ

2002/02/27 11:35

>どくた
休める時は休んでおいた方が良いです。
継続は力なり、っちゅー言葉もあるしさ、全速力で100メートル走るより、歩きで10キロの方が良い時もある。
特に今の病院はゆっくりの方が合ってるみたいだしさ〜

そーゆー私は今週は月曜日の頭から半休<あまりやる気のない模様。


>wolfさん
梅か〜春だねぇ〜
元気なwolfさんてどんな感じ?次のオフは満月にやりましょう(笑)

それより花見したいなぁ〜
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29 ともちゃんだ!

2002/02/27 12:47

どくたさま
かなめさんの仰るように、ゆっくりお休みくださいませ。。。
どくたのお仕事は人間の生命に直接かかわる大変なお仕事。心身が疲れた状態で人さまを診るなんてできませんよね。その辺は、ともなんかより、どくたはずっとわかってるでしょう。。。
でも、ともみたく
月曜は午前半休、火、水は休むというていたらく人間にだけはならないでね。。。はふぅ・・・
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30 mad_doc

2002/02/27 16:18

かなめさま、ともちゃんだ!さま、

サボり医者にねぎらいの言葉ありがとうございまする(うるうる)。どーも頑張りすぎてるのは、主治医のセンセには見え見えのようで、今は鬱のクスリと躁病のクスリを交代に飲んでます(笑)。わしにもわけわからん。

んじゃ、症例その6 助手さんその2
 
 この隠れ喫煙所でたくさんの看護婦さんや助手さんと仲良くなれました。
助手さんの一人宮沢さん(仮称)は40歳半ば。そこで、なにやら一生懸命勉強しています。
「何してるんですか?」
「いやだ、センセには恥ずかしくて見せられないわぁ。」
「ええ、何ぃ?」
「でも・・・センセだったら、解けるかな。」
「ああ、何でも聞いて下さい。」胸を張る私。
 宮沢さんは、准看護婦の試験問題集を必死で解いていたのです。
「数学のところが解らなくて」
(ヤベ、数学だと、との内心の乱れを悟られないように)「まぁ、見せてください。」

『A地点からB地点には秒速5m/秒の風が吹いています。A地点からB地点は612kmです。
 A地点からB地点まで2時間33分かかった飛行機はB地点からA地点までどの位かかったでしょう。』

 見事にチンプンカンプンれす。正直、数学(以前の算数から)は大の苦手なのです。足し算引き算以外はもーダメなのれす(こんな人間が医者になる所が偏差値教育の恐い所です。英語と国語で偏差値稼いでいたのれす)。
「う〜〜ん、う〜〜ん」と唸っている私を見て宮沢さんは「センセでも解けないなら、絶対私には解けないっ!!」と半泣き状態になるし、あ〜も〜正直バカの丸出しです。
「いやいやいや、宮沢さん大丈夫、絶対大丈夫。私が頭悪いだけだから。」
「センセが頭悪ければ私はもっと頭悪いっ!!」
(あー、ゴメン、宮沢さん、余計な不安を与えてしまった・・・・ホントにあたし頭悪いのに)
「待って、ウヨクセンセに聞いてくるっ!」

 医局に走り、「ウヨクセンセ、ウヨクセンセ!」と叫びます。
「なんだなんだ。」
「この問題解けますかっ!」
「こんなの中学校の問題じゃねぇか。センセのほーが得意だろ。」じい様センセ達一同ゲラゲラ笑います。
「これがこうなって・・こうなって・・ほれ。」
「あ、簡単だぁ。」
「なんで、こんなのやってんだぁ?」
「いや、タバコ吸ってたら助手さんが准看の試験解いてて。」
「おっ、サヨチャン、タバコ止めてなかったのかっ!」糖尿センセが怒り出します。
「げっ、ばれたか。いや、隠れ吸い場所があって・・・。」
「どこだ、どこだ。」
「旧棟の屋上の踊り場で・・・。」
「俺、15年努めてるけど知らなかった。ふ〜〜ん。」
「ああ、良かった。ありがとうございますっ!!」

「宮沢さん、スッゴク簡単だよぉっ!」
「解けました?」
「うん、ウヨクセンセが解いてくれたっ!こうやって・・こうやって・・ほらっ!」
「あっ、ホントだぁ!さすがウヨクセンセ!」
「だてに歳取ってるんじゃないんだぁ。」
 スパスパしてた看護婦さんの一人が言い、みんなで笑いました。
「これは?先生?」
「う〜〜ん、う〜〜ん。」・・・・・

 結局、私はその問題集を借り、医局に持って帰りました。夕方、興味を示したじい様センセ達が診療ほったらかしで(苦笑)「ほれほれ」「こうこう」と全部解いてくれました。
「偉いなぁ、助手でも歳取っても勉強しとるんやなぁ」
 とじい様の一人がつぶやきました。いやぁ、その通り。私、スッゴク恥ずかしくなりました。

 試験は2月23日。受かるといいな。宮沢さん。

う、さっき携帯に電話がありました。やはり教師が悪かったようで、落ちちゃったみたいです。ゴメン、宮沢さんっ!!

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31 ともちゃんだ!

2002/02/27 16:56

>数学(以前の算数から)は大の苦手なのです。足し算引き算以外
>はもーダメなのれす(こんな人間が医者になる所が偏差値教育の
>恐い所です。英語と国語で偏差値稼いでいたのれす)。
わーい!ともと一緒だぁ!!ともも、英、国、社で点数稼いでた口です。理数は、沈没しまくりでした。。。
といっても、どくたとともじゃ、レベルが違うか・・・
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32 ☆彡

2002/02/28 01:11

新聞に出てる入試問題を見るのすら避けている自分がココにいる…
大学生の頃は、今でも解けるかな?!なんて思いながら見ていたのに…
日常に流され勉強しなくなって頭が鈍ってるなぁ〜記憶力も落ちてるし…(まだ痴呆じゃないつもり…これが危ないのだが)

頭の良くなる薬創っておけば良かった…
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33 氷犬

2002/02/28 12:43

わしは、英語(特に単語)と社会(特に歴史と地理)は、暗記が面倒で、さっぱりやったわ。
得意やったのは、算数と国語と理科、それと図工と体育と音楽。
見事に全部、暗記する事が少ない科目やった。

暗記なんて、大嫌いや〜〜〜!!
(歴史の年号で覚えられたのは、1600年関ケ原の合戦と、1601年の関ケ原の合戦一周年記念だけや。(笑))
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34 かなめ

2002/02/28 15:43

英語は中1の一学期レベル(ホント)
数学は関数と一緒に出てきたグラフがさっぱりだったけど、後は普通に解けたかな・・・
国語、漢字が書けない。地理、カタカナで出てくる意味が覚えられない。歴史、好きだけど年号が覚えられない。科学、元素記号を覚えていない。
体育は苦手なので音楽と家庭科で点数稼ぎ。
こんなアホなのに時々「賢い」と言ってくれる人がいるこの社会、恐るべし。
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35 mad_doc

2002/03/06 19:32

>ともちゃんだ!さま、

まじやばいのです。准看護士の21歳のにーちゃんが私達を見てあきれていました。

>☆彡さま、
>頭の良くなる薬創っておけば良かった…

今からでも遅くありませんっ!!お願いしますっ!

>兄貴、

兄貴は確かに理系っぽい。
そんな兄貴がステキーーー(えのきだけでもアスパラでもいいわぁ!!)

>かなめさま、
>こんなアホなのに時々「賢い」と言ってくれる人がいるこの社会、恐るべし。

まさしく。
あなおそろしや。

んじゃ、wolfさま「作者急病のため(笑)」ばあさんネタいきましょう。いや、ロージン病院はネタの宝庫です。

症例その7 doubt(ダウト)

 井伊純子さんは、91歳の優雅な物腰の老嬢です。海軍少尉だった御主人が太平洋戦争で戦死した後、世田谷区の閑静な一軒家で一人、後添いも子供も持たず生活していました。
 最近、ボケが出てきて一人で生活出来なくなったということで、近所の人がうちの病院に入院させました。近所の人というのは二軒隣の深谷さん。65がらみのでっぷりとしたギョロ目の紳士。なんでも、ご近所のお年寄りのお世話を積極的にしてくれる人という事で純子ばあ様本人も深谷さんの事を神様のように言います。大体、入院する際に親族以外の方が連れてくると言うことがやや奇妙な感じがしましたが、「都会では孤独なお年寄りが多いんだなぁ」位に思っていました。
 しかし、井伊さんに入院時検査に行って貰っている間、深谷さんから意外な言葉が飛び出してきました。
「親戚はいるんですよ、実は。」
「はぁ。」と私。
「姪っこと旦那の兄貴夫婦がいるんですがね、どうも井伊さんの財産を狙っているんです。」
「はぁ。」
「だから、私が秘密に入院させました。わたしはね、」ここで深谷さんの声はややドスの利いた声に変わります。
「元、事件記者をやっていました。今は都の公安委員会にも所属しています。石原さん(さん呼びです)とは二週間に一度は食事しています。」
「へぇ・・・。」
「先生、私が井伊さんの後見人になるつもりなんです。親戚に財産取られたら大変ですから。」
「はぁ。しかしですね、一応、ご親戚がおられるようであれば、一応そちらの方々にもご病状をお伝えする義務があるんですよ。」
「いやいやいや、先生、いけませんっ!ボケたと言ったら、あいつらがすぐに財産を処分してしまいます。」
「しかしですね、お年もお年ですから、お命に何かありました時には連絡が必要なので・・・」
 私の声をさえぎるように、深谷さんは続けます、
「いやいやいや、それもこちらで全て面倒をみますから大丈夫です。」
 そうこうするうちに純子ばあ様は帰ってきました。
「あぁ、純子さん、良かったねぇ、入院できて。後はぜ〜〜んぶ私が面倒みるからねぇ。」
 急に猫撫で声になる深谷さん。
「深谷さ〜〜ん、ありがたいですねぇ。わたしゃね、戦争が終わってから、主人の遺骨を鹿児島まで取りに行ってねぇ、それが、もう、田舎の田舎で。福岡まで汽車に乗って、そこから乗り換えて、鹿児島のどこだったっけ、あぁ、鹿屋で乗り換えて、あそこはどこだったっけ、そう、開聞岳、開聞岳の近くまで行ったわさ、帰りは、遺骨を抱いてねぇ、どうやって帰ったか覚えていないよぉ。」
 うう、60年前の話をず〜っと続けます。
私は必死に痴呆の診断をするために(長谷川式という検査方法がある)、話の腰を折り、
「今の総理大臣はだれですか。」と聞くも、
「そんなの関係ないよ。わたしゃね、戦争の話をしてるんだよ」と、つれない純子ばあ様。
「まぁ、先生、後日、司法書士を連れて手続きをとりますから宜しく。」と深谷さんは帰りました。
 帰りしなに渡してくれた名刺は「白瀬南極探検隊を偲ぶ会 事務長」「帆船海王丸クラブ 幹事」・・・・。
 どちらも怪しすぎる名刺です。
その夜インターネットで調べても「帆船海王丸クラブ」はありましたが、幹事に深谷さんの名前はありませんでした。
 それから、純子ばあ様のケースワーカーさんと一緒に私はホーリツのお勉強を始めることになりました。

doubtその2以降につづく 
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36 氷犬

2002/03/07 00:02

こんばんわ、アスパラです。(笑)

深谷さん。わし好みのキャラクター登場やな。
深谷さんの胡散臭さは、わしに近いもん有るで。(笑)

習得困難て言うとったけど、センセのじらしテクも相当なもんや。
やっぱり実践に基づいたじらされで、ツボを心得とるんかな。(なんや最近シモのネタ多いなぁわし。)

そうや、言い忘れとった。
答えは三時間やな。(今更なんのこっちゃ、やな。(笑))
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37 いろは

2002/03/07 01:28

どくー、子供の無い方の相続ってホント大変ですぞ(司法書士の娘)

兄貴ぃぃー、私が良く行く絵のサイトにアスパラさんって
HNの人が実在してますぞ、女の人やけど。(爆)

深谷さん、胡散臭さ炸裂で続きが気になりますぅ。

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38 youko

2002/03/07 16:41

どくた 自家用ジェット買ったら乗せておくんなまし。

ボケのチェック方法というのを私は時々やっております。
自分の名前 昨日何食べたなどなど
もっとも、パソを開いてる限りは大丈夫かも。

それとゴミの収集日・・。月もえないごみ。火・金燃えるゴミ
1.3水<ビン> 2.4水<カン> 1木<ペット>
 3水<発泡スチロール> 古紙回収  ・・・。
これをこなすのは、頭の体操だぞお。 
みんながぼけてきて、てんでばらばらに出したらどうなるん
だろうか?
町中がごみだらけ・・・。

純子ねえさんによろしく。せんせ
ついでに氷犬さまタイプの深谷せんせにも。
白瀬南極探検隊、懐かしいです。


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39 mad_doc

2002/03/16 11:54

>兄貴、
3時間、正解です(遅いって・笑)。

>いろは様、
司法書士さんというお仕事今回初めて見せて頂きました。
お父様に宜しくどうぞ。

>youkoさま、
>白瀬南極探検隊、懐かしいです。
ひょっとして”偲ぶ会”会員ですかっ(爆)?

ほい、続編です。
ここまで、時間がかかったのは、実はこの話はリアルタイムの話だからであります。やっと、結論がでました。

症例その8 doubt(ダウト)2
 ケースワーカーさんの岡本さんはいろいろな法律関係の本を持ってきてくれました。なんやら、ここ数年で法律が変わったらしく、以前とは対応の仕方が違うようです。

 話はずれますが、4人いるこの病院のケースワーカーさんはスゴ腕です。何故か殆どの自分の担当患者さんの治療状況・リハビリ状況を把握していて、独自に家族やその居住地区の福祉事務所と話し合いを持ちながら患者さんの将来的な方針を決めていってくれます。今まで、家族との話し合いに凄く時間をとられていた私は、なんだか腕が一本生えたみたいな気がします。基本的には、介護保険などを有用に使いながらリハビリで快復した患者さんは一度お家に帰って貰う。どうしても、家族の受け入れが悪かったり、介護度が強く家族の負担が大きい患者さんはホームに入所して貰う。そういう家族の気持ち等を良く把握していてくれるので、私は暇なときは医療相談室(ケースワーカーさんの部屋)で茶を飲みながら、彼女らと雑談まじり(いや殆どが雑談)で患者さんの家庭の情報を仕入れます。

 今回は岡本さんと医療相談室にこもりました。
岡本さんは花粉症の私のために「甜茶」という花粉症に効く茶を毎回入れてくれました。
純子ばあ様のような”痴呆”の入っている方の財産相続には大きく分けて「任意後見制度」と「成人後見制度」に分けられます。
「任意後見制度」は、将来的に判断能力の衰える可能性のある人が、その前に財産の後見人を司法書士・公証人と共に選定出来る制度です。
「成人後見制度」は現在判断能力が衰えている人が、司法書士・公証人・家庭裁判所の判断を仰ぎながら財産後見人を選定する制度です。
 つまり、純子ばあ様が本当にボケているかで、この二つのどちらを使うかが決まって来るわけです。
そもそも、「ボケが出てきて一人で生活出来なくなった」ということで入院してきた方ですから、「成人後見制度」をとるのが妥当だと思いました。
「先生、やっぱり純子さんはボケてますよねぇ」と岡本さん。
「う〜〜ん。長谷川式はなかなか純子ばあ様はやってくれないのよねぇ。だから、医学的に”痴呆”とは診断できない。深谷さんの名前とか覚えているし、昔話は出来る程度、だけど、夜間、フラフラ病室から出てきて看護婦さんに”お米を研がなきゃ”とか、言うらしいし。」
「それをボケというんでしょ。」
「まぁね。」
「あのねぇ、先生。やっぱり、深谷さんは怪しいと思うんですよ。来週連れてくる司法書士さんも深谷さんのお友達みたいなんですよ。深谷さんが言ってたんです。」
「お友達でも司法書士さんには変わりないでしょ。」とわたし。
「だけどね、先生。私、電話で、後見制度の事深谷さんに話したんです。」
「はぁ、そしたら?」
「”任意”でやるって言ってるんですよ。」
「うう、でもそもそも”ボケが出てきて一人で生活出来なくなった”と言って連れて来たのは彼じゃないかいな。」
「そう。だから、怪しいんですよ。」
「怪しいなぁ。」
「診断書で”痴呆”と書けば、成人後見制度になります。」
「う〜〜ん、でも、よくわからん事を診断書に書くのはまずいではないかいな。」
「そうですよねぇ。
 ”痴呆”じゃないと言えば、任意後見制度で深谷さんにお金がはいる。
 ”痴呆”といえば、多分、血縁の親戚が後見人に認定されるんじゃないでしょうか。」
「うひゃあ、骨肉の争いだなぁ」
「それでね、私、純子さんの社会保険事務所に連絡してご親戚の連絡先を聞きました。
 わたし、深谷さんの事お知らせせずに純子さんが入院している事はお知らせしようと思うんですよ。
 それで、見舞いにくるかどうか、来てくれたら、深谷さんの事お知らせしようと思うんです。
 先生、どうですか?」
 さすが、岡本さん。
「いい作戦だぁ。取りあえず、純子さんのこと心配してれば、来るはずだもんね。」
「そうなんです。現実問題として、純子さんが自分の財産を自分で管理できないのは事実です。
 それならば、純子さんにとって一番いい後見人を見つけてあげるのが私達の仕事だと思うんです。」

 お医者の力より、ケースワーカーさんのこの力のほうが、お年寄りとそれを取りまく環境にとっては必要だなぁと感嘆しながら思いました。

あらあら、まだまだ続いちゃいます。

doubtその3に続く

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40 まりかちゃ管理人

2002/04/22 13:38

よお、続き書く気あるのか?管理人としては、書いて欲しいんだがにゃ。月刊誌よりまずいペースだし、落とした場合は、お詫びなり事情を入れるべきだと思うが…

あんまり変わってないな。。。
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41 氷犬

2002/04/23 11:20

まりかちゃさんも、「早く続きが読みた〜い」て素直に書きゃええのに。(笑)

センセも色々忙しいのかも知れんし、
まあ、気長に待とうや。
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42 まりかちゃ管理人

2002/04/23 13:07

ちょっと違うんだな、これが(笑)

一応管理人としての発言です。創作小説なので時間がかかるのもわかりますし、それについてどうこういうつもりはないのですが。
一応、1ヶ月ぐらい更新がない場合、どうするのかなぁ?と聞いた見たほうがよいかと。書き方がまずいんですがね、上の場合は。
相手が相手ですから、その辺は勘弁していただくとして。

書き込みがないものをどうするかとか、いろいろありましてね。
書き込み不可にもできるし、キープしておくことも可能なんですが。
ほったらかしで、そのままなのが一番困るかなぁと。

ま、テストケースとして、注意を促して見ました。
管理人もいろいろ考えてるわけよ。。。ということでご了承を。
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43 風花

2002/05/03 11:57

>書き込みがないものをどうするかとか、いろいろありましてね。

長い間 空白があると 管理の都合上 困るということ?
このまま いつでも書けるように しておいたら マズイの・・・

って、誰かが 時々 こういう書き込みを すれば可?(笑)   
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44 風花

2002/05/03 12:04

どくたーの創作は うちの子供も楽しみにしています。
いつになっても 構わないので また書いてくださいね♪
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45 まりかちゃ

2002/05/03 16:35

放って置くと、このようにカキコが入る。。。
それは、ある程度仕方のないことなのですが、
続きが書けるなら、言ってくれれば書き込み不可とかにもできて、
しばらく放置も可能ということなのです。

荒らし行為はないけど、あったら困るでしょ?ってこと。。。(笑)
なかなか、管理も大変なのです。
しかも、創作小説は、物が物だけにね。。。(苦笑)
しばらく書けそうになかったら、そう言ってくれたほうがありがたいかなとは思います。
途中で挫折とかね(笑)
創作小説は、長期戦覚悟ではあるのですが。。。
しかも、書き手は少ないし。(ぼやきになってるなぁ)

ね?これも荒らしてるみたいじゃん。(ちっ)(笑)
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46 風花

2002/05/03 16:49

お役目 ご苦労さま!

>放って置くと、このようにカキコが入る。。。
それは40番のカキコがあったから。

確かに作者によっては、このような書き込みを嫌がる人もいるでしょうね。
でも、アラシとは違うと思うけど・・?

**私の書き込みは削除してもらっても構いませんよ。
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47 nicopapa

2002/05/03 18:43

続きを書く気があるかどうかよりも、ドクターに何か、一ヶ月も掲示板にはアクセスできないような何か深刻な事が起こったと言う事ではないんでしょうね...

このトピ以外でどなたかドクターと連絡はとっているのでしょうか?それともこのトピに更新の無い間も他のトピに彼女は参加しているとか?
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48 YOU

2002/05/15 21:57

ドクター、どうしてるかなあ・・・と思う今宵。
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49 madocyk

2002/05/17 12:06

皆様、とくに相変わらず毒舌爽やかな(アイテテ、殴るなよ)管理人様のまりかちゃさま、ご無沙汰してて申し訳ありません。
どーも、じい様センセだらけのビョーインに若者が飛び込んだもので、コキ使われています。
今では、何故かビョーインの経営戦略会議にまで駆り出されています。
あと、ビョーインPRのHP作りにも着手しています。
鬱病なのに・・・(泣き)
と、いうことでなかなかこっちまで手が回りません。
申し訳ありません。
スレッドをどうするかは管理人様に御一任いたします。
一息ついたらまた復活しますので、その時もどうぞご贔屓に。
>nicopapaさま、まさか、わしが死んだとでも妄想してたんじゃ(笑)?
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50 YOU

2002/05/17 18:00

>じい様センセだらけのビョーインに若者が飛び込んだもので

どくたあ! このじい様というのがくせものです。(笑)
今のじい様は頭がクリアであれば、体力は30台には負けませんよ!20台にも負けないかも・・。

というわけで、病院の発展をお祈りしております。
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51 ともちゃんだ!

2002/05/17 19:13

どくた、無理なさらないで、出来る範囲でやってくださいね。まぁ、ご自分でもわかってるとは思いますが。。。

YOUさん
>30台
これって・・・台数?(笑)
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52 YOU

2002/05/17 21:14

ともちゃーん!!!!!!
パチンコ一気に30台は疲れますう!!!!!
私の頭ははやクリアーとは程遠いものになりつつある(爆)

ひとりで笑いころげるわたしであった・・。(ぴゅううう)

どくたー いまどきのじい様は30歳代には負けませんよ。
いや20歳代にも負けないかも!  (爆)

上記、お詫びして訂正します。
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53 nicopapa

2002/05/18 08:36

ドクター、

まあ、亡くなるとは言わなくとも事故に遭ったとか、病の床に伏せっているとか、鬱の症状が再発したとかの可能性はあるかなとは思いました。あまりにもぶつ切りのエンディングでしたので...

単にお忙しくて掲示板にまで手が回らないとしたら、しょっちゅう掲示板に入り浸りの生活をしているよりも健康的でしょう(自嘲)。お仕事がんばってください。
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54 wolf

2002/05/18 23:47

>しょっちゅう掲示板に入り浸りの生活〜。
にこぱぱさん。
本好き連のこわーいオネーサマ方を、全部敵に回します?(笑)
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55 nicopapa

2002/05/19 00:09

> 本好き連のこわーいオネーサマ方を、全部敵に回します?

飛んでも八分歩いても十五分(何のこっちゃ?...笑)
あれは自分に対して言っています...(汗)

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56 まりかちゃ

2002/05/20 15:26

このまま放って置いてやろうかしらん?(笑)
すでに、修復不可能みたいだし。。。

ま、時間かかりそうなんで、そのうち書き込み不可にしておきます。
今のうちですよ、書き込みするんなら(笑)

毒舌爽やか。。。日本語まちがえてますね。(苦笑)
ま、熱中しすぎて壊れないように。。。どーせ壊れてるからそれ以上は壊れないだろうが(大笑い)
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57 さわでぃ

2002/05/20 20:08

|_・)ちらっ

お邪魔します。さわでぃです。
ドクター生きてたんですね。ほっとしました。
・・・わたしも生きてます(笑)。

ではでは・・・

|)))ささっ…
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58 いろは

2002/05/28 21:14

わーお!どくた、お元気だったのねー。
多分、忙しくってネットどころじゃないんだとは思ってましたが
やっぱり、そうだったんだー。
いつまででも、待ってるから、余裕のある時に来てねー。

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59 madoc

2002/06/04 10:51

 さぁ、今日はワールドカップ、日本vsベルギー戦です。
これは仕事休んででも観なければなりません。
ということで、じい様達に患者さん押しつけて今から戦闘モード突入です。

 皆様方の仰る通りです。じい様達のパワーはとどまる事を知りません。やはーり、戦争で軍医さんとして出兵したヒトは違います。多分、肉体年齢はわたしの方がばあ様だと思わされます。

 さて、しばしの(?汗)タイムラグがありますが、純子ばあ様の話を終わらせましょう。ちょいと今から、ワープロソフトで打ち込んできますので、しばしお待ちを。
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60 madoc

2002/06/04 11:59

doubtその3

 岡本さんは電話で親戚に連絡してくれました。
一番の血縁の姪御さんは「もう何十年も連絡を取っていない人だから他人と思っている」との事。
今後一切純子ばあ様については口を出さないと言うことを電話で確認を取り、それを岡本さんは文章に起こしました。

 旦那さんの弟夫婦と言う人(これって血縁なんかなぁ)は電話を受けて遙々病院までやって来てくれました。それで、事の次第を話したところ、血相を変えて
「確かに私達も疎遠にしてきましたが、それとこれとは話が違う。」
 と、言い出しました。
それとこれ・・・純子さんの命と金の話と言うことか?・・と、なんだかため息が出てきます。
まあ、しかし、私達はやれる事をやりました。後は医療の範囲を離れます。

 私のあとすべき事は、純子ばあ様の療養を豊かなものにする事です。幸いに純子ばあ様は年なりの痴呆があるほか身体の状態は良く、このまま平穏に老人ホームに入所するのを待つだけです。私の仕事は時間のある時に純子ばあ様を昼間出来るだけ起こしておいて、夜ぐっすり寝て貰う事です。何故なら、痴呆老人が病院に入院した場合、最も心配なのは、昼間の変化のない生活で、昼夜逆転して夜間徘徊などの問題行動の結果、転倒・骨折する事だからです。

 つまり、私には純子ばあ様の戦争話におつき合いするというかなりガマン大会的な仕事が出来ました。
私はどちらかというと短気な方です。
同じ話を何度も「そうね、そうね」と言いながら聞くよりは、もー救急車が三台いっぺんにやって来てそれぞれに心筋梗塞と脳出血と腹部大動脈瘤破裂が乗っているほーがマシという韋駄天です。
それで、純子ばあ様には30分と時間を決めて一日二回朝と夕方に15分づつお話を聞いて、昼間は一回ちゃんとご飯を食べているか見るというルールを勝手に決めました。

 15分という時間は、お話を聞くのに私にとっては丁度良い時間です。同じ話を聞かされても(これだけ純子ばあ様の脳に焼き付いているのは、この体験がこの人にとって最も印象的な事だったんだなぁ、愛する旦那様を戦争で亡くすという事はこれ程のインパクトを持っているんだなぁ、戦争ってやっぱり罪な事だなぁ)と感慨に耽る心の余裕も出来ます。また、私がいくと純子ばあ様は(15分といえ)話をゆっくり聞いてくれる人が来たと認識するようになりました。おまけに、純子ばあ様は私の持っているあるものが非常なお気に入りでした。

 それは、私が聴診器につけているパンダのお人形です。これは昔の患者さんの形見なのですが、「あぁ、可愛いねぇ、可愛いねぇ」といつも初めてみるようにしげしげとお人形さんを手にとって眺めます。いつの間にか私は「お人形の人」とばあ様に呼ばれるようになりました。

「あぁ、お人形の人が来たぁ。」
「井伊さん、今日はどうですか。」
「可愛いねぇ、可愛いねぇ。」
「体の調子はどうですか。」
「もうね、私は大変だったんだから。」
「何か、ありました?」
「いやね、戦死したっていう連絡が来てね、もう頭の中が真っ白になって。」
「そうですよねぇ、気の毒にねぇ。」
「そう言ってくれるのはあんただけだよ、もうね、あの時にはとるものも取りあえずねぇ。どうやって汽車に乗ったのかも良く憶えていないよ。」
「憶えてるじゃないですか、鹿児島まで行ったんでしょ。」
「あら、あんたよく知ってるわねぇ、どうしてそんな事知ってるの。」

 まぁ、こんな調子です。

その水面下では深谷さんとのやりとりが続けられました。

キーボード打ち疲れたので doubtその4に続く

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61 氷犬

2002/06/04 20:34

センセ、
今頃、日本戦の余韻に浸っとる頃か?(笑)
祝再開。
ゆっくりまったり行こうや。な。

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62 YOU

2002/06/04 21:07

久しぶりのドクターの再開です。
お待ちしておりました!

<なんてったって野球派>の私もこっそりワールドカップを・・。
なんというミーハーや!と罵られながら、みるゲームのスリル。
でも野球とちがってトイレの時間が難しいよお(笑)ほんと。
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63 いろは

2002/06/04 22:42

わーい!どくたーの復活だー!!
深谷さんの行動はいかに??(わくわく)

スポーツ音痴のわたくしめは、FMラジオまでがサッカー放送になってショーーック!!です。(笑)
ターザン山下カムバーック!!←地元ネタで、すんません。神戸のFM局のDJなんです。
でも、ニュースで日本チームがゴールを決めてるとこだけ見ました。


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64 かなめ

2002/06/05 00:18

どくたー、待ってました〜vv

夕方6時過ぎ、私が居間でテレビ(アニメ「十二国記」)を観ていたら、祖父がやって来ました。
祖父の使ってるTVは調子が悪くて、30分くらい放置しておかないと点いてくれないのです(買い換えないのかと訪ねると、先が短いからと答えます・苦笑)
そうです、祖父は日本VSベルギーを楽しみにしていたのでした。
70半ばの爺さんまでも巻き込むワールドカップ、恐るべし(笑)
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65 wolf

2002/12/09 10:11

全然かんけー無い話なんですが・・・

どくたーって、犬飼ってます?
犬種は、フレンチブルドッグ限定で。

いや、深い意味はないんだけど。。。
ものすごーく偏った名前(笑)が付けられた犬を、ネット上で見掛けたもんで。
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