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タイトル : 山の南や 春の月

1 fool

2003/10/30 22:42

 時は、夕暮れ時。
 街道沿いの宿の一室に、一人の男がいた。連れもなく、外の喧騒以外何一つ音のない部屋の中で、男は一人で茶を啜っている。
(これが、私の選んだ道か・・・・・・)
 机に置いた湯飲みを見る視線は、どこか遠くを眺めている。
 優しげな顔をした男である。が、今はその顔も冴えない。深く沈んだ顔色である。その顔に刻み込まれているのは、ただの疲れでも、失望でも、諦めでもない。もっと虚無的な何か。
(私は、正しいのだろうか)
 あまりにも無意味な問い。もはや、自らが行き着く場所は一つしかない。
(彼らが選んだ道は、私が選んだ道よりも遥かに険しいものなのだろう。私は私の道を行こう)
 正義を貫いたと言うつもりはない。ただ、義に従って生き、
「そろそろ、来る頃かな」
 従って死ぬだけである。
 手が壁に立てかけてあった愛刀、赤心沖光に伸びる。今まで何度も修羅場を共にした相棒である。
 男がいるのは宿の二階だった。誰かが階段を登る気配を感じる。
 その気配は、男の部屋の前で止まった。
 襖が、ゆっくりと開かれる。
 そこに立っていたのは、背の高い細面の青年だった。どこか笑っているような愛嬌のある顔立ちをしている。青年に、男は笑顔を向けた。
「やあ、なんとなくだけど多分、君が来ると思っていたよ」
「こんな所にいるなんて、最初から逃げる気なんてなかったんですか?」
 少し戸惑ったような青年の声。
 男は、刀を手元に手繰り寄せていた。青年はわずかに腰を落とし、細い目がさらに細められた。
「やる気ですか?」
「・・・・・・いや、君相手に剣を振るう気にはなれないよ。負けが見えているからね。・・・・・・では行こうか」
 男は、刀を床に放り投げた。
 青年は、その刀をじっと見つめている。
「帰れば、どうなるのかは知っていますよね?」
「ああ、今さら君に説かれる必要はないよ。その上で君は私を追ってきたのだろう?」
 男の顔はあくまでも晴れやかである。それは、京から見える空のように。
「これが、私の選んだ道なのだよ。沖田くん」
 慶応元年、2月23日。山南敬助はその生涯を終える。


 謎が多い人物である。彼について語られるエピソードはあまりにも少ない。新撰組幹部の中で群を抜いた博識であり、北辰一刀流の免許皆伝者。文武を両立させるこの男が、局中法度を破り脱局した本当の理由を永遠に知ることはない。
 無意味であることを知りながら、一つの「もし」を問うてみたい。
 もし、彼が新撰組の追っ手から逃げ切ったとしたらどうなっていたであろうか?総長自らが法度を破り、その上、新撰組が彼を逃がしたとしたら、隊士の動揺は並のものではなかったであろう。彼は脱局することで自らの意思を明確にし、そして彼らに捕まることで、ここまで育て上げた新撰組を守った、と言うのはあまりにもご都合主義の考え方かもしれない。
 山南だけでない。伊藤、芹沢など、誠の旗の下に集まりながら、己の道を歩くがために決別し、命を捨てた者たちがいる。

 そして、彼らを殺した者がいる。

 彼らに、時勢と言う名の挽歌が流れるのは、まだ先の話である。
 多くの血を吸いながら、己の道を歩むために壬生狼はその爪を、牙を研ぎ続ける。
 いつか自らが、自分たちの手で殺めた者の元へ逝くその日まで。
 今はただ・・・・・・。

 京の都に、狼の咆哮が響く。

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2 fool

2003/10/30 22:43

京都観光の余韻がまだ抜けてません・・・。
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