POB 本好き連。

*本好き連へようこそ* URLが変更になりました。 ブックマークの登録の変更をお願いします。


四季の移ろうように人も変わっていきます。
しかし、ここに集う人が変わらない唯一のこと
それが本好きである事です。

本好き連はBBSがメインのちょっと変わった集まりです。
一つのスレッドを上げればそこはあなたのスペースになります。
必要なのは、ハンドル・ネームとお約束を守ってくれること。
一緒に遊んでみませんか?

*お約束*
個人に対する誹謗中傷などはしないでください。
HPの宣伝等は書いたままにするのではなく、一生懸命宣伝してください。
自分の発言には自分で責任を持ちましょう。

個人情報の取り扱いにご注意ください。

遊BBSへ近道
本のBBSへ近道
マナーを守って投稿しましょう。この掲示板ではタグは使用できません。
URL、メールアドレスは自動的にリンクされます。
新規投稿はすぐ下から行えます。
スレッド削除キー(最初に投稿した削除キーと同様)   

タイトル : 落日色の空

1 fool

2003/07/12 22:16

ほとんどの方はじめまして。ここに来るのは今日がはじめてです。BBSにも書き込みしてますんで、よろしくお願いします。
BBSでの自己紹介で、小説を書いてると書きましたので、ちょっとしたショートストーリーをここにのせてみようと思いました。とある雑誌の読者参加企画に送っているものなんですけど、もしお暇な方いらしたら最後まで見てやってください。
タイトルは「落日色の空」
ではどうぞ・・・・・・。


 悲劇がやって来たのは、その日の授業が終わるのとほぼ同時だった。
 そこに、神様はいなかった。

 僕が地下から這い出した時、そこにはもう何も残っていなかった。
 ここは、僕たちが通う学校の片隅にある小さな礼拝堂。毎日欠かさず、僕たちはここで祈りを捧げていた。
 でも、もう祈ることはない。授業が行われることもない。
 お祈りも、授業も、時々面倒だなって思ったこともあったけど、もうする必要すらない。すべては終わってしまったのだ。
 授業も、お祈りも、もう終わり。
 ここはもう礼拝堂ではなく、ただの焼け焦げ、瓦解した建物だった。
 ―異教徒。
 僕たちを襲った奴らは、僕たちをそう呼んでいた。迷惑をかけた訳じゃないのに。異国の片隅でひっそりと、僕たちは、僕たちの信じたものに祈っていただけなのに。
 辺りには、焼け焦げた建物と、肉の臭いがした。逃げ切ることが出来たのは、僕と、
「・・・・・・もう、誰もいない?」
 地下から、怯えた声が聞こえる。
「うん、もう誰もいないよ。大丈夫」
 小柄な少女が顔を出す。同じ学校に通いながら、今まで話したこともなかった、名前も知らない少女。
 生き残ったのは、僕たち二人だけ。
 秘密の地下室。こんな事態のために用意されていたはずなのに、逃げ込めたのは僕たち二人だけだった。
 地上に出てきた少女は、その惨状に目を見張り、立ち込める臭気に口元を押さえる。
 少し我慢した後、耐えかねて嘔吐した。
「うっ、うえっ・・・・・・」
 お昼の給食の名残が吐き出された。もったいない。
「大丈夫?」
 少女は健気にも首を縦に振ったが、体をくの字に折り曲げたまま、何も吐くものの残っていない嘔吐を繰り返す。
「どうして・・・・・・?」
 口の周りを吐瀉物で汚したまま、少女はすすり泣く。
「私たち、なんにも悪いことしてないよ?毎日、いい子にしてたよ?どうして?」
 すすり泣きはどんどん大きくなり、少女は大声を上げて泣き始める。
 泣き続ける少女の隣で、僕は立ち尽くしている。足元には、石像の欠片が落ちていた。
 僕たちが信じていたものを象っていた石像。僕たちはこの石像に毎日祈りを捧げていた。
 でも、今はすでに、ただの石の欠片。
 夕暮れ時、今日の夕焼けはとても濃くきれいに世界を染めている。
 僕も、
 少女も、
 石の欠片も、
 見たくもない現実も、
 すべてが、鮮やかに染まっている。
 とても鮮やかな落日色。
「どうして、こんなことになったの?」
 少女は、同じ質問をうわ言のように繰り返した。
「僕たちが、信じたいものを信じたから」
「それは悪いことなの?」
「とても、危険なこと」
「じゃあ、もう祈らない」
 少女は、僕が持っているのと同じような石像の欠片を掴むと、無造作に投げ捨てた。
「だから、みんなを返して」
 鋭い目つきで、太陽を睨む。
「返して!」
 そんな少女に何も答えずに、太陽はただ沈む。落日色が消えていく。その先は深い闇。落日を過ぎ、終焉がやって来る。そしてその先は?
 落日はきれいな夕焼け色
 終焉は深い闇の色。
 その先には何もない。何色でもない先があるだけ。
 僕たちには、何も残されていなかった。
「これからどうするの?」
 どうする?どうしようというのだろう。自らの身を守る力も持たない僕たちに、できることなんかなかった。
 力もない。
 食べる物もない。
 信じるべきものも、なくなった。
 少女の問いに、僕はナイフを二本拾い上げた。多分、僕たちの学校をこんな風にした奴らの落し物だ。その一つを少女に手渡す。意図を読み取った少女は一瞬身を固めたが、覚悟を決めナイフを受け取った。
「ここ・・・・・・」
 ナイフを握った手を、心臓の位置に添えてあげる。僕も、同じくナイフを自分の心臓に構える。
 その姿勢のまま、僕たちは立ち尽くしていた。青ざめた少女が、泣きながら僕を見つめている。
「できないよ。私、怖がりだから・・・・・・」
「大丈夫」
 そう言えば、少女の名前を聞いていなかった。でも、もういい。必要ない。
 不意に僕は、少女を抱きしめた。思いっきり強く。
 驚愕の表情が、少女の顔に浮かぶ。それが、僕が見た少女の最後の表情。
 二人の間で、心臓に構えられていたナイフは、簡単に皮膚を突き破り、僕たちの心臓を貫いた。

 夜が来た。崩れた建物の中にあるのは、多くの焼け焦げた死体。
 そして、焼けていない、まだ新しい二つの死体。抱き合うように寄り添った、二つの死体。
 落日は夕焼け色。
 終焉は深い闇の色。
 その先には何もない。
 もう、ここには、何もない。

削除キー   

2 れみすけ

2003/07/14 13:37

なるほどー。これで2000字弱くらいですか?この分量でこのまとまり、書き慣れていらっしゃるのですね。
メインBBSで氷犬さんも書いていらっしゃいましたが、神と信仰に対する絶望がもっと書き込まれていれば、もっと感情移入して読めたのに、と思いました。
あ、でも私は、生き残った「僕」がもう一人の生き残りである「少女」に、彼女が選択肢に入れてなかった「死」を強要すること、彼女の選択権を「僕」が一方的に奪うこと。これを「僕」の抱えるエゴイズムとして捉える読み方をしてしまったので、foolさんの意図とはずれた感想なのかもしれません。
「僕」にとって彼女を死に誘うことは優しさなのか傲慢なのか、とひとしきり考えてしまいました。
あと、こうるさいですが、最後の6行。私は「僕」視点で最後までまとめてくれた方が読みやすかったです。
すぐに夜が来るだろう。そこには死体があるだろう。みたいな。
死の間際に吐露される、「僕」が感じた絶望、という形で。
んー、でもこれは好みかもしれませんね。

色々言っちゃいましたけど、とにかく、面白く読ませていただきました。ホントに。
冒頭の「そこに、神様はいなかった。」で、ぐっと引き込まれて、それからするすると読み進めることができました。

次作も期待していますvv ぜひ書いてくださいねー!
削除キー   

3 fool

2003/07/14 21:31

なるほどー、勉強になります。
これで確か千六百文字程度だったでしょうか。応募した企画というのが二千文字以内限定での応募だったので、それを意識しすぎたせいで、書き込みが不足してしまったようです。

>次作も期待していますvv ぜひ書いてくださいねー!

こんなありがたいお言葉を頂戴しながらも、普段は(身の程しらずもいいことに)新人賞に送ろうとしていたりするので、今のところ遊BBSに書くネタを考える余裕がありません(滂沱)すみません〜。
削除キー   

4 氷犬

2003/07/15 23:47

新人賞に応募する作品貼り付けて、様子見るちゅうのはどうなんやろ。
(ひそひそ声で→)ヒミツにしとくから。(笑)
削除キー   

5 fool

2003/07/16 00:02

新人賞に応募したわけじゃないですよ。遊び企画に出しただけで、これでデビューを狙えるというわけでもないですし(企画としても、個人の技量面としても)
様子見と言うより、ただ少し、自分の書いたものを人に読んでもらいたかっただけです。これだけ本好きな方が多い場に来ることは今までなかったので。
ヒミツにしていただく必要もないですよ(笑)
削除キー   

6 fool

2003/07/16 00:14

>普段は(身の程しらずもいいことに)新人賞に送ろうとしていたりするので、

言葉が足りなかったようなので訂正しておきます。この作品の続きを応募しようとしているわけではなく、これからのことを考えるので一杯一杯だという意味ですので。
削除キー   

ホームページ  検索  ヘルプ  |  リスト   前のスレッド  次のスレッド  
お名前
メール
内容

送信する前に確認しましょう       

Point One BBS